2012年06月23日

6月 江戸ワンダーランド 日光江戸村

大江戸八百八町の時空散歩、
「日光江戸村」。

2012年6月某日
 
28 武家屋敷通り 2s.jpg 

 夏の気配を宿した鬼怒川の6月。「江戸村は、いいですよ」と、いつになく力のこもったホテルスタッフの勧めで今回は連れと2人、満を持して日光が誇る一大テーマパークへと向かうことにした。ホテルでもらえる割引券を使えば通行手形(フリーパス)の大人一人4,500円が4,000円と割安で楽しめる。「日光江戸村」は、町人文化が花開いた江戸の時代考証に基づき、15万坪の広大な敷地に当時の町並みをリアルに再現した巨大テーマパークだ。ホテルから村までは国道121号線を柄倉方面へ車で約10分と至近だ。
 村はこんもりとした山を背景にした里山の環境に忽然とあった。入口は関所になっており、購入した通行手形を見せると、帯刀した門番が、お役目とかけ離れた気さくな笑顔で、中へ誘導してくれる。此処で偶然知り合った、粋な縞着物を着こなした自称 “おせっかいおばさん”こと、村の艶女 “ 梅さん”が、幸運にも私たちの“珍道中”にお供いただけることになった。

01 関所s.jpg03 梅さんs.jpg02 関所s.jpg

時代劇のロケ地にて
歴史を生きる、江戸人体験。

 関所を過ぎると木立に囲まれた街道風のアプローチが続く。道の両脇には躑躅やサツキ、紫陽花や蝋梅といった季節の花が配され、道祖神も祀られている。やがて番屋のある宿場町の入口に到着。お不動さんのある一角には、実際に此処に居る村民たちが書いたという(梅さん談)願い絵馬がかけられ、宿場の賑わいが漂う。ふと目を向けると、修学旅行の一団らしき子供たちの元気な姿もあちこちに見えた。
 村には旅籠や商家、武家屋敷や芝居小屋、太鼓橋やお堀、さらには曳き馬や屋形舟といった、コンパクトながらも大江戸八百八町を細部にわたって再現した町並みが続いている。村は時代劇や歴史ドラマ、映画のロケ地としても活用されているようだ。道には着物姿の町娘や髷をたくわえた侍や商人が行き交い、まさに江戸時代へタイムスリップしたかのようだ。“歴史を現実として楽しむ”という、村のテーマにつくづく感心させられる。観光客に人気だという「変身処」では人気の忍者や岡引、芸者や花魁、新撰組など好みの衣裳に着替え(3,000両〜/3,000円〜)、江戸人になりきって、そのままの姿で町を歩くこともできる。いずれも専属の髪結、衣装といったプロのスタッフが揃う江戸村ならではの本格さだ。

04 街道s.jpg05 絵馬s.jpg17 変身処 あs.jpg
15 風景 10s.jpg12 風景 01s.jpg

活気あふれる商人町。
粋でいなせな江戸っ子談義。

 「私の使いで、いま女中は出ておりますが、すぐ戻ってまいりやす。今日の夜ごはんは白米と味噌汁と煮干し。明日の朝は、お漬物もつけますよ!」  “旅人”として、梅さんに案内された「旅籠 下野屋」の主人“甚平さん”が、愛想よく話しかけてくる。立派な旅籠の佇まいに「本当に泊まれればねぇ」と、連れも残念がっていたようだ(笑)。
 掘に架かる両国橋のたもとでは、御神籤(おみくじ)売りの町娘が客の足を止め、女旅芸人が南京玉すだれを披露していた。時代劇の悪役でお馴染みの「越後屋」もあり、いかにもワル、な顔つき(失礼!)の若旦那こと “文左衛門さん”が梅さんと軽妙な掛け合いを繰り広げる。小判が宙を舞う“オリジナル手ぬぐい”や、“袖の下まんじゅう”などのユニークな商品を実際にあきなう 「越後屋」には、大旦那や大番頭、女将役も存在し、面子が揃えば道端で時代劇さながらの江戸版ホームドラマが始まる。後から知った話では村人にはプロの芝居役者も多いと言う。観光客とのアドリブトークの絶妙さも、なるほど納得。シナリオのない会話も、此処でのもてなしのようだ。

07 旅籠 02s.jpg08 旅籠 03s.jpg13 南京玉簾s.jpg
09 越後屋 店内s.jpg10 越後屋 主人s.jpg11 越後屋 手拭s.jpg

迫力満点の時代活劇と
重厚感あふれる武家屋敷群。


 そろそろショーが始まるよ、と梅さんに促され、村の中央にある火の見櫓の野外ステージへ向かう。村では一日を通じて敷地内にある4つの劇場で忍者や水芸、遠山の金さんのお裁きといった時代劇や芸能が上演され、見どころは尽きない。本日の野外ステージの演目は“石川五右衛門とねずみ小僧次郎吉”。屋外ならではの大胆な演出とコミカルな脚本、役者の大立ち回りに集まった見物客も大喝采だった。
 数ある催しの中でもこれは必見、と梅さん推薦の「忍者からす屋敷」は、開演30分前から行列ができる人気のショーだ。期待を胸に早速、私たちも列に並ぶ。会場への誘導を待つ間、近くの観光客としばしの江戸村談義。これもまた嬉しい旅の一興だ。気になるショーの内容は、驚き連発のからくり舞台、迫力満点の殺陣など、手に汗握るものだった。私たちの前列で観劇していた外国人家族は、あまりの感動に次の上演にも並んでいたようだ。
 日本橋を渡った敷地の一番奥には、北町奉行所や小伝馬町牢屋敷といった、風格あふれる武家屋敷群がある。このあたりはエンターテイメント性を控えた展示ゾーンとあって、商人町の賑やかさと一線を画す静かな情緒が魅力だ。江戸の重大事件を蝋人形で再現した長州藩邸内には、浅野内匠頭(あさの たくみのかみ)が松の廊下で吉良上野介(きらこうずけのすけ)に切りかかるシーンをはじめ、歴史上の各場面が年代別に迫力満点に紹介されていた。

18 野外ステージs.jpg
19 野外ステージ 3s.jpg21 忍者からす屋敷 2s.jpg
24 風景 04s.jpg27 小伝馬町老屋敷 2s.jpg29 長州藩邸 2s.jpg

再現された江戸庶民の味わい。
知るほど深い、歴史の妙。

 昼どきとなり、梅さんといったん別れ、評判だと言う“江戸かき揚げ”をいただきに「日本そば藪」の暖簾をくぐる。かき揚げ付の“江戸かき揚げせいろ”(1,500両/1,500円)とシンプルな“江戸せいろ”(800両/800円)を注文。江戸時代の町民が実際に食したという、煮ぬき汁を使った味噌味のそばつゆでいただく江戸せいろは、どこかほっとする素朴な味わいだ。海老、桜エビ、三つ葉、玉ねぎが入った大きなかき揚げはカリカリと香ばしく、意外にペロリといただける。店内には髷姿の町人も同じ食事中。その景色が自然に思えてきた自分たちに思わず苦笑。恐るべし江戸村マジック、だ(笑)。
 午後は梅さんと再び合流し、村はずれの山道を少し登った先にある「活動写真の里」へ。山の緑に包まれ現れた「活動写真の里」は、時代劇のオープンセットとして造られた施設で、小道具も細かい武家屋敷や長屋は人々の息遣いが聞こえてきそうな驚くべきリアルさだ。洗濯物が軒に並ぶ長屋通りを梅さんが歩く姿はさながら、この暮らしが21世紀の現代に続いている錯覚さえ覚える。
 近くには「忍者怪怪屋敷」なる不思議な建物もあった。中は平行感覚を狂わせる眩暈のするような造りで、子ども達が何度も何度も大騒ぎで建物に入っていく。村ではエンターテイメントもさることながら、江戸文化を伝える学習施設として礼節研修の茶道教室(予約制)も開催されるらしく、かなり本格的に造られた“黄金の茶室”もあった。硬軟取り混ぜの、まさに大人も子供も遊んで学べる歴史体験空間だ。

30 02 日本そば藪 江戸前天笊s.jpg31 活動写真の里 03s.jpg
33 活動写真の里 きs.jpg35 忍者怪怪亭s.jpg36 黄金の茶室s.jpg

自然に寄り添う古き良き営み。
時代に問いかける豊かさの意味。

 気付けばもう、いい時間帯。梅さんに今日一日の礼を言って別れたあと、江戸スイーツの定番、三色だんご(100両/100円)をいただきながら、パラパラと降り出した小雨にしばしの雨宿り。ふと気づくと向かいの「日本伝統文化劇場」の木戸から、残念そうに天を見上げる芸妓風の町娘の姿が‥。通りでは連日、華やかな花魁道中があるらしい。あいにくの天気で今日は妓楼を兼ねた館での屋内上演となったようだ。娘の姿を釘付けで見つめる私に、連れが「貴方ひとり、此処で暮らしてもいいのよ」とニンマリ顔。
 此の地で旅人を迎えてもう20数年、と言う梅さんは、機械やテクノロジーに頼らない、人が人と出会うことで生まれる、ぬくもりのあるもてなしが、とても好きだと語ってくれた。江戸村は、人として庶民が心豊かに過ごした時代へのオマージュではなく、人が人に癒され、人に会いに出かける本当の意味での贅沢の価値を喚起する場所なのかもしれない。

23 風景 03s.jpg37 だんごs.jpg38 文化劇場 2s.jpg
40 バイキング ソフトs.jpg41 バイキング ソフトできたs.jpg42 バイキング 鍋s.jpg

 スイーツと言えば、ホテルの夕食のバイキングに好みのフルーツを選んで、オリジナルサンデーが作れるソフトクリーム機が仲間入りしていた。遊び心も手伝い、連れも含め女性客のほとんどがこの新スイーツに夢中のようだった。私もまた鍋の具材を駆使し、鶏のスープにうどんと豚肉、旬のニラをたっぷりあしらい、茹で上がりに玉子を落としたオリジナル鍋を堪能。どんなに満腹でもオリジナル、という言葉にどうやら人は弱いようだ(笑)。
 季節の先取りを粋とした江戸の人々。村人もまた、袷から単の軽快な着物に衣替えしていたが、自然の景色は対照的に、十二単のように濃淡様々な、絢爛な緑であふれていた。夏には夏の、五感をゆさぶる村の景色がまたやってくる。勇壮な水掛龍神神輿や七夕飾り。水打ちされた店先に響く風鈴の音色と蝉しぐれ。ビルや快適な家の中では決して味わえない、心充ちる日本の贅沢に出会いに行ってみてはいかがだろうか。

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posted by kinugawaaruku at 17:56 | 日記 | 更新情報をチェックする
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