2011年10月25日

10月 鬼怒川五橋巡り

鬼怒川五橋巡り(+1)、
雨上り散歩。


2011年10月某日

29立岩橋02s.jpg

 夜の闇にまぎれ鬼怒川の瀬音に加勢した雨音に、雨厄は私か君か?と夫婦で面白喧嘩。天気予報をチェックし、長雨の季節に半ば明日の予定をあきらめつつ迎えた朝、空は小雨ながらほんのりと明るさをたたえていた。川面には幻想的な川霧も漂っている。その美しさに惹かれ、今回は順を追って鬼怒川の橋めぐりを訪ねることにした。鬼怒川には「鬼怒岩橋」「滝見橋」「くろがね橋」「ふれあい橋」「立岩橋」と呼ばれる「鬼怒川五橋」がある。それぞれの橋には邪気を払い福を招く“邪鬼”をモチーフに地元作家、藤原郁三氏が作陶した「鬼怒太」「鬼怒子」像も設置され、スタンプラリーポイントにもなっているようだ。
 ひとつめの「鬼怒岩橋」は温泉街の最北、温泉公園駅から歩いてすぐ、川治方面へ向かう日塩有料道路入口付近にあった。橋の対岸には「日光人形の美術館」が雨上がりの緑に溶け合うように佇んでいる。橋上から望む山河の景色は、いま描き上げたばかりの絵画のようにしっとりとした潤いをたたえている。
 此処で出会った鬼怒太像はくつろぐ姿を表現したという“半跏鬼(はんかき)”。橋のたもとからは1km先の上滝河川公園へと続く遊歩道が伸びていた。道を200m程下りた河川敷の展望テラスは晴れた日には安らかな水景色越しに霊峰鶏頂山が望めるらしいが、今日はあいにくの空模様。少々、残念。

02鬼怒岩橋02s.jpg01鬼怒岩橋01s.jpg
06鬼怒岩橋06日光人形の美術館s.jpg
07鬼怒岩橋07半跏鬼s.jpg04鬼怒岩橋04s.jpg


袖振り合うも、他生の縁。
往くひと来るひと、吊橋の道。


 次なる「滝見橋」は五橋の中では最も情緒あふれるこじんまりとした吊橋だ。橋は花見処でもある芝桜の植えられた滝見公園と隣接し、広い駐車場や公衆トイレも完備されていた。公園は憩いの場らしく、随所に地元彫刻家による作品や花壇が配置されている。ここの鬼怒太は豊かな鬼怒川の未来を想う「思惟鬼(しいき)」とある。が、その視線の先には美少女の彫像が…。邪気を払う鬼神と言えども、煩悩には勝てないのだろうか(笑)。
 橋は公園から続く遊歩道の先、階段を下りた場所に周囲の緑に埋もれるようにあった。車はもとより自転車も通行できないため往くひと、来るひとの足取りは一様に穏やかで、ゆらゆらと揺れる吊橋の途中で驚き立ち止まる観光客の姿もちらほら。橋脚にあった注意書きによれば、重量制限は一度に30人らしい。橋上からは名の由来だろうか、岩陰に小滝の姿も見え隠れしていた。公園の南には温泉街の中でも情緒あふれる小道として知られる花見坂も続く。桜とツツジの季節にはまた麗しい趣にあふれるのだろう。

08滝見橋01s.jpg09滝見橋02s.jpg
12滝見橋05思惟鬼s.jpg
13滝見橋06s.jpg14滝見橋07花見坂s.jpg


温泉街の最高の名勝。
名を語るくろがね製の歴史橋。


 我々がいつも世話になるホテル至近の「くろがね橋」は、鬼怒川温泉発展の中心であり、最も歴史ある橋とのことだ。この橋は大正3年に下滝発電所(現:東電鬼怒川発電所)を建設する際、資材運搬用に架けられたことに端を発する。「くろがね」の名は橋が架けられた当時、日本でも珍しい鋼鉄製だったことによるらしい。規模も佇まいも派手さはないが、ゆったりレイアウトされた歩道には花のプランターやベンチもある。ここの陶像は“遊心鬼(ゆうしんき)”と名付けられた女鬼の鬼怒子だ。頭にリボンをつけ寝転びながら頬杖をついている姿はかなり人間的だ。
 対岸には渓谷を眺める公共の足湯棟もあった。嬉々と喜ぶ連れと早速、素足を浸けてみると…これまた熱い!我々と同様に表情をゆがめる観光客と盛り上がる楽しい湯端談義のひととき。棟内には“手湯”も設置され手足を一度に温められる造りになっている。建物の壁にあった写真パネルには130年以上に渡り鬼怒川の歴史を見つめ続けてきたこの橋の歴史が紹介されていた。橋からは河岸近くの展望台まで下りることのできる遊歩道も設けられ、四季折々の景色を立体的に楽しめる。

15くろがね橋01s.jpg16くろがね橋02s.jpg
19くろがね橋05足湯s.jpg
18くろがね橋04s.jpg20くろがね橋06遊心鬼s.jpg


高さ45mの鬼が描かれた大階段。
歩行者天国専用のイベント橋。


 温泉街のほぼ中心に位置する「ふれあい橋」は文字どおり、広い空き地がない山間の温泉街のイベントスペースを兼ねた水道橋だ。広々としたこの橋の両端は階段と車止めがあり、一般乗用車は一切乗り入れできない完全な歩行者天国になっている。橋の両岸は温泉ホテルがひしめき合うように立ち並び、静かに渓谷を望むというよりは街の活気が伝わる佇まいだ。橋のたもとには温泉観光協会が毎年主催する絵手紙コンテストの応募作品の陶板がズラリと展示されていた。老若男女が描き上げた微笑ましいひとつひとつの作品を連れと鑑賞しながらゆるゆると歩く。
 しかしこの橋の圧巻は何と言っても橋の対岸に迫ってくる高さ45mの赤鬼の階段絵画だろう。脇には大正浪漫風なレリーフもあり、この橋が人々の憩いの場所である生活空間であることが分かる。ちなみにここの鬼怒太は腕組みをし足で合掌をする「定印鬼(じょういんき)」。腕を組むのは鬼の定印で人とは逆に手のかわりに足で合掌し、幸を祈るのが鬼のスタイルだと言う。

22ふれあい橋01s.jpg23ふれあい橋02s.jpg
24ふれあい橋03s.jpg
26ふれあい橋05s.jpg27ふれあい橋06定印鬼s.jpg


楯岩の美観を橋上から堪能。
鬼怒川ライン下りのハイライト。


 五橋巡りのフィナーレ「立岩橋」は昭和38年、鬼怒川バイパスの完成で開通した橋だ。物流の主要道として車が行き交う一般道路だが、この橋の歩道から眺める鬼怒川渓谷の素晴らしさは想像以上だった。下流側には渓谷にそそり立つ高さ100mの巨岩「楯岩」の凛とした姿が印象的な美しさで迫ってくる。この辺りは人気の観光、鬼怒川ライン下りのハイライト、急流下りの場所としても有名で、早瀬に勢いを増す船の姿を橋上から眺めることができるスポットになっている。丁度、私たちが訪れた時もラフティングの一団が渦巻く急流を岩礁を避けながら下っていったところだった。スマートに見えるオールさばきも、水面では迫力満点に違いない。鬼怒川はラフティングの他、自然と戯れる冒険体験のキャニオリングやカヌーなどのアウトドアメニューも多彩だ。これからの季節ならスノートレッキングやエアボードもあるらしい。鬼怒川の楽しみはまだまだ尽きない。
35立岩橋07青バージョンs.jpg
30立岩橋03s.jpg
28立岩橋01s.jpg36立岩橋08s.jpg


足を伸ばして、六橋めぐり?!
鬼怒岩楯岩大吊橋ぶらり。


 平成21年7月に完成した「鬼怒楯岩大吊橋」は名勝楯岩と鬼怒川温泉を結ぶ全長約140mの歩道専用吊橋で、観光客に一番人気の鬼怒川の第6番目の橋だ。橋上からは立岩橋とは反対側から望む楯岩の姿と渓谷の神秘的な景観が楽しめる。“楯岩を眺めるなら大吊橋か?それとも立岩橋か?”と訊かれたら、私の好みとしては先の立岩橋に軍配だ。
 吊橋の途中には景色を望むバルコニーも設けられ、この日も多くの観光客が立ち止まり盛んにシャッターを切っていた。水面を這う川霧の絶妙な美しさに惹かれ、私も幾度か撮影を試みたが、更ににぎわいを増した観光客に吊橋はデリケートに反応し、なかなかピントを合わせてはくれないようだ。
 橋の対岸には「楯鬼(たてき)」と名付けられた鬼怒太像が仁王立ちする広場があり、その先は楯岩展望台方面と古釜沢の滝方面に道が分かれている。観光客の多くは、見晴らしの良い楯岩展望台方面へと向かうようだ(詳細は5月のブログで参照)。橋のたもとからは隣の立岩橋まで渓谷沿いに赤松林を抜ける松原遊歩道が続いていた。途中、楯岩を眼前に見上げる撮影スポットやスポーツ公園もあり、歩いて10分程度の静かな散歩コースだ。2つの橋を“はしご”しながら、変化に富んだ鬼怒川の景色を見比べてみるのもいいだろう。

39鬼怒楯岩大吊橋02s.jpg41鬼怒楯岩大吊橋04s.jpg49鬼怒楯岩大吊橋10s.jpg
51鬼怒楯岩大吊橋12s.jpg
50鬼怒楯岩大吊橋11楯鬼s.jpg52松原遊歩道01s.jpg

 男性的な鬼怒川と、どっしりおおらかで女性的な楯岩を結ぶことから鬼怒楯岩大吊橋は“縁結び”の橋でもあるという。丁度、訪れた日は若いカップル連れも多く、楯岩展望台の頂上では“縁結びの鐘”の音色がひっきりなしに澄んだ音色を響かせていた。
  「橋(はし)」という字は古く「間」と書かれ《モノとモノを結ぶ“あいだ”》という意味を持ち、やがて両端部を示す”はし”をも意味するようになった。それが水平であれば「橋(はし)」となり垂直であれば“柱(はし・ら)”となる。神への供物をつまむ「箸(はし)」もまた神と人をつなぐ意味を持つ。それを知ればこそ「橋めぐり」にも神妙な愉快さがあるというものだ。
 男女たがわず縁は異なもの、味なものである。詳細に続く…


posted by kinugawaaruku at 11:09 | 日記 | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。